安全配慮義務から考える事業継続マネジメント

みんなのアレルギーEXPO2017

<みんなのアレルギーEXP開催セミナー講師インタビュー>

安全配慮義務から考える事業継続マネジメント
~東日本大震災・熊本地震の被災地の声から学ぶ~

●講師
岡本正(銀座パートナーズ法律事務所 弁護士、一般社団法人地域防災支援協会 防災アドバイザー)

<セミナー概要>

首都直下地震や南海トラフ巨大地震、局地的なゲリラ豪雨など、甚大な被害が予想される自然災害に対して、「企業の災害対策」として、事業継続マネジメント(BCM)の重要性が注目されています。本セミナーでは「安全配慮義務」に着目し、その観点から事業継続マネジメントの進め方を考えます。東日本大震災では津波からの避難が争点となり、多くの訴訟事案が発生しました。その背景は何か、それを教訓として私たちはどのような備えを行い事業の継続につなげていくべきなのか。そのポイントをお伝えします。

当セミナーの講師、岡本正氏にセミナーのポイントについてお話をお伺いしましたのでご紹介します。

今、企業に求められるBCP(事業継続計画)

岡本正氏

岡本正氏

BCP(事業継続計画)とは、自然災害、大火災、テロ攻撃などの事態に企業が遭遇した場合、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を実現するために平時から行っておく対策のことをいいます。首都直下型地震をはじめ、日本全国どこでも、常に大災害に見舞われる可能性のある日本の企業においては、大切になってくる取り組みであるといえるでしょう。

<岡本正氏プロフィール>

1979年生まれ。神奈川県鎌倉市出身。弁護士。マンション管理士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。防災士。震災対応の経験から「災害復興法学」を創設。慶應義塾大学法科大学院非常勤講師ほか役職・公職多数。近著「災害復興法学」(慶應義塾大学出版会)。

BCPのキーワード「安全配慮義務」

企業には、従業員が安全・健康に働くことができるように配慮する義務があります。この義務を安全配慮義務といい、企業や組織は、自然災害であっても、安全配慮義務を負うとされています。大災害からの被害を最小限におさえるためにも、企業はこの義務を果たす必要があります。そして東日本大震災では、この安全配慮義務に関して「津波からの避難」が争点となり、多くの訴訟事案が発生しました。この訴訟事例からは、BCPの一つとして企業が平時からどのような備えを行っておくべきかということがみえてきます。

安全配慮義務が判決のポイントとなった津波犠牲者訴訟

2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う津波により、企業や行政の施設など多くの方が犠牲になりました。その遺族が会社に対して訴えを起こしたのが津波犠牲者訴訟です。訴訟に至った事案には、民間企業や行政(自治体)など多数に及び、既に判決や和解などにより終結している事件もあります。多くの訴訟では、遺族らは、施設の安全や関係者の安全を守るべき企業や自治体が、適切な情報収集や避難指示をせず、災害対応のマニュアル整備を怠っていたとして、「安全配慮義務違反」等を根拠に企業(自治体)に対し損害賠償を求めていました。判決の結果、安全配慮義務違反であるとして損害賠償責任を問われた企業(自治体)もあれば、安全配慮義務を尽くしたとして損害賠償責任を問われなかった企業(自治体)もあります。この結論を分けたポイントは一体何でしょうか。これらを分析することで、「企業は何をすべきであったのか」「関係者の命を守るためにどんな準備が必要だったのか」が見えてきます。

企業に求められる安全配慮義務の内容

津波犠牲者訴訟の裁判例や、過去の大災害の際の企業責任が争点となった事例を分析すると、企業に求められる安全配慮義務の内容が浮かび上がってきます。争点は多岐に亘りますが、特に重要なのは、災害発生後に企業が適切な判断や更なる情報収集を現場ですべきなのに、それを怠ったということで、安全配慮義務違反に問われる可能性があるということです。そのうえで、収集した情報をもとに、災害時に適切な判断のうえで、避難等の指示を出せることが必要であるとしています。安全配慮義務の内容として、この情報収集と、適切な判断力が重要な内容になっていると考えられます。

企業が安全配慮義務を果たすために必要なこと

では、企業はどのような視点をもって安全配慮義務を果たして行けばよいのでしょうか。ひとつは、災害時の指揮命令系統と人員の動き方を明確にしておくことです。災害時に判断権者が不在にならないようにしておくということです。命を救うための情報をしっかりと収集できるよう、またそのために指示が出せるようにルールを明確にして、全従業員へ周知しておくことが不可欠です。ここがしっかりと機能するように備えておくことが、企業がまずもって取り組むべきBCPのポイントであるといえるでしょう。その大前提として必要なってくるのが、災害時に適切な判断権を行使できる「災害対策のための人材育成」ということになります。

企業の災害対策の要諦、人材育成

組織には幹部職員や役職者、またパート・アルバイト職員など実に様々な人たちがいます。この中から災害時に指揮系統を担う人員を決めておくことも重要ですが、さらに企業に関わる全ての人に「災害時の動き方」を認識していてもらう必要もあります。しかし、災害に対する人の認識は様々です。「どうせ津波被害のない地域だ」という考える人もいるかもしれません。しかし、自分や家族、そして取引先や関係者も含めて、広く「被災するとどうなってしまうのか」を考えることで、災害対策を「命と企業を守るためのわが事」として考えてもらうことが大切です。

災害対策を「わが事」として捉えてもらうために

災害対策を「わが事」として捉えるためには、災害が起きた際、一人ひとりにどのような事態が起こるのかをリアルにイメージしてもらうと共に、そこからの「生活再建」策を知ってもらうことが効果的です。「災害がきたら終わり」で終わらせてしまってはいけないのです。その先の生活再建の具体的な手法があることを知ることで、「災害があっても生活再建ができる」「希望をもって歩き出せる」という認識になるのではないでしょうか。

セミナーでは企業のBCPのポイント、被災した時の「生の声・悩み」、そして、そこからの生活再建の具体的手法についてもお話します。参加者の皆さまには、是非「物の備蓄」とあわせて「知識の備蓄」もしていただけたらと思います。